そんちん

孫綝

子通 生没年231年 – 258年 所属

帝を廃し大臣を屠った、呉を蝕む暴虐の権臣

能力値
統率 D
武力 D
知力 D
計略 C
政治 E
人望 F
関連年表
231年 孫静の曾孫として生まれる。孫峻の従弟
256年 孫峻の急死を受け、二十六歳で政を握る
256年 呂拠を自害させ、滕胤を一族もろとも誅する
257年 諫めた王惇を殺し、朱異を陣中で斬る
258年 帝・孫亮を廃して会稽王に落とし、孫休を立てる
258年 丞相・荊州牧となるも驕りやまず、皇帝の賜り物を突き返す
258年 臘会の宴で丁奉・張布に捕らえられ、斬られる(年二十八)
258年 一族誅殺。孫峻とともに族籍を除かれ「故綝」と貶称される

略歴

孫綝、字を子通といい、孫堅の弟・孫静の曾孫にあたる呉の宗室で、権臣・孫峻の従弟である。太平元年(256年)、孫峻が三十八歳で急死すると、その遺言によって後を継ぎ、侍中・武衛将軍・都督中外諸軍事となって、二十六歳の若さで政を握った。 その専横は、従兄にもまして苛烈であった。まず、孫峻の死に乗じて権を奪おうとした呂拠と、これに与した衛将軍・滕胤を討つ。呂拠は自害し、滕胤は一族もろとも誅された。翌年には、諫めた大司馬・呂岱の後任として派遣された王惇を殺し、朱異が魏との戦(寿春の救援)で成果を挙げられなかったと見るや、陣中でこれを斬っている。功臣も宗室も、意に沿わぬ者は容赦なく屠られた。 やがて帝・孫亮が長じ、姉の全公主らとともに自分を除こうと謀っていることを知ると、孫綝は先手を打った。太平三年(258年)九月、兵をもって宮を囲み、孫亮を廃して会稽王に落とし、代わりに琅邪王・孫休を迎えて帝位に即けた。 だが孫綝は、新帝を侮りすぎた。丞相・荊州牧に任じられ一族五人が侯に封じられてなお驕りは収まらず、皇帝の賜り物を突き返し、「われを廃するつもりか」と放言するに至る。同年十二月の臘会、孫休は老将・丁奉、張布と謀って宴席に孫綝を招いた。不吉を感じた孫綝は再三ためらったが、十度の使者を受けてついに参内する。酒がめぐったところで伏兵が立ち、たちまち捕らえられた。 孫綝は「交州へ流されても構いません」と命を乞うたが、孫休は「ならばなぜ滕胤・呂拠を流さなかったのか」と切り返し、その場で斬らせた。年二十八。一族はことごとく誅され、罪状が暴かれて孫峻ともども孫氏の族籍から除かれ、以後「故峻」「故綝」と貶めて呼ばれた。

逸話

孫綝の最期は、彼が自ら滅ぼした人々の名によって決した。臘会の宴で捕らえられ、平伏して「交州へ流していただくだけで結構です」と命を乞うたとき、孫休はこう応じた——「ならばなぜ、卿は滕胤や呂拠を流してやらなかったのか」。かつて自分が一族もろとも誅した相手の名を突きつけられ、孫綝は返す言葉を持たなかった。 その日、孫綝は朝から不吉を感じていたという。宴への出席をためらい、病と称して断ろうとしたが、十度にわたって使者が遣わされ、ついに断りきれずに参内した。従兄・孫峻がかつて宴席で諸葛恪を誅したのと、そっくり同じ手口で命を落としたことになる。宴に招いて討つ——呉の宮廷では、権力はこうして受け渡され続けた。 死後の扱いもまた苛烈であった。一族はことごとく誅され、罪状が暴かれると、孫峻・孫綝の墓は掘り返されて印綬を取り上げられ、粗末に改葬された。二人の名は孫氏の族籍から除かれ、以後の記録では「故峻」「故綝」——もはや孫氏ではない者、として貶めて記された。宗室でありながら宗室の列から抹消されたのである。 孫峻・孫綝の従兄弟二代、わずか五年ほどの専横が、大帝・孫権の遺した呉を内側から蝕んだ。滕胤も呂拠も朱異も失われ、人材は払底する。二十年後に晋の大軍が長江を下ってきたとき、それを支えるべき者は、もう多くは残っていなかった。

評価

孫綝は、宗室の身でありながら、恐怖と粛清によって政を専らにし、皇帝を廃し忠臣を屠って、呉の政治を極度に荒廃させた暴虐の権臣である。徳を欠いた権力は誰の信も得られず、ついに新帝の反撃を受けて誅された。 孫峻・孫綝の代の暴政は、大帝・孫権の遺した呉を内から蝕み、その衰亡を決定的にした。

演義

小説『三国志演義』では、従兄・孫峻の後を継いで専横をふるう権臣として登場する。帝・孫亮を廃し、孫休を立てて意のままにしようとする。 だが孫休が丁奉らと謀り、宴席で捕らえられて誅される。呉の宮廷を乱す権臣の末路として描かれている。
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