しょうきょう

小喬

生没年生没年不詳 所属

周瑜の妻となった、廬江の美姉妹の妹(二喬)

能力値
統率 F
武力 F
知力 E
計略 F
政治 F
人望 B
関連年表
後漢末 廬江郡皖県の橋公の次女に生まれる
199年 皖城の陥落により、姉とともに孫策の手に落ちる
199年 二十五歳の周瑜の妻となる
208年 夫・周瑜が赤壁で曹操の大軍を破る
210年 周瑜が巴丘で病没する(三十六歳)
以後の消息は史書に残らない
唐・宋 杜牧「二喬を鎖さん」、蘇軾「小喬 初めて嫁ぎ了り」に詠まれる
※正史の表記は「小橋」。史料はごく僅か

略歴

小喬は、廬江郡皖県の橋公の次女であり、美姉妹「二喬」の妹である。 正史『三国志』呉書・周瑜伝は、建安四年(199年)に孫策が皖城を落として橋公の二女を得たこと、姉妹がともに国色であったこと、孫策が大橋を、周瑜が小橋をめとったことを記す。小喬について史書が語るのは、ほとんどこれに尽きる。 夫となった周瑜は、このとき二十五歳。孫策とともに江東を切り取ったばかりの、若き名将であった。九年後の建安十三年(208年)、周瑜は赤壁で曹操の大軍を焼き払い、天下三分の形勢を決定づける。だがその二年後の建安十五年(210年)、蜀を攻める計画を胸に西へ向かう途上、巴丘で病を発して没した。三十六歳であった。姉が一年で夫を失ったのに対し、小喬の結婚生活は十一年ほど続いたことになる。 周瑜には二男一女があった。長男の周循は孫権の娘・孫魯班をめとったが早世し、次男の周胤は罪を得て流された。娘は孫権の太子・孫登の妻となっている。ただし、いずれも小喬の生んだ子であるかどうかは、史書に明記がない。 孫権は周瑜の遺族を終生あつく遇したと伝わるが、小喬自身のその後を記した史料は残されていない。姉と同じく、彼女もまた、数行の記述だけを残して歴史の記録から消えている。

逸話

小喬の名を不朽にしたのは、史書ではなく詩である。北宋の蘇軾は『念奴嬌・赤壁懐古』にこう詠んだ——「遥かに想う 公瑾の当年、小喬 初めて嫁ぎ了り、雄姿 英発」。周瑜のあの頃を遥かに思う、小喬が嫁いできたばかりで、その姿は輝くばかりであった、と。 だが史実の順序は違う。小喬が周瑜に嫁いだのは建安四年(199年)、赤壁はその九年後である。「初めて嫁ぎ了り」は明らかな詩的誇張であった。それでも、この一句によって「赤壁に立つ若き名将と、その美しい新妻」という像は決定的なものとなり、以後の周瑜像を支配することになる。 もう一つ、さらに名高いのが唐の杜牧の『赤壁』である——「東風、周郎に与に便あらずんば、銅雀春深くして二喬を鎖さん」。もし東風が周瑜に味方しなければ、春深い銅雀台に二喬は閉じこめられていただろう、と。敗北の恐ろしさを、領土でも王朝でもなく、二人の女性の運命によって示した一句である。もっとも、曹操が鄴に銅雀台を建てたのは建安十五年(210年)——赤壁の二年後であり、時系列としては成り立たない。杜牧は史実の順序よりも、像の鮮烈さを取ったのである。 そしてこの詩が、物語のなかで思わぬ働きをする。『三国志演義』において、諸葛亮は開戦をためらう周瑜を前に、曹植の『銅雀台賦』を暗誦してみせる。そのなかの「二橋を東西に連ね」——本来は楼閣をつなぐ二本の渡り廊下を指す句を、諸葛亮は「二喬を東南に攬りて、朝夕之と共にするを楽しまん」と読み替えた。曹操の南征の目的はあなたの妻だと信じ込まされた周瑜は激怒し、開戦を決意する。 史実には影も形もない創作だが、その素材はまぎれもなく杜牧の一句であった。詩人が仕掛けた「二喬」という像を、物語作者が四百年後に受け取り、開戦の動機にまで仕立て直したことになる。史書がわずか数行しか記さなかった女性が、後世の文芸のなかで赤壁の理由そのものにされた——受容の力を、これほど示す例も少ない。

評価

小喬は、史書の記述こそ乏しいものの、赤壁の英雄・周瑜の妻であり、絶世の美姉妹「二喬」の妹であることによって、時代を越えて語り継がれてきた。 美女と英雄という取り合わせは、後世の詩人や物語作者の好むところとなり、乱世に咲いた花として、数多くの作品にその面影を残している。

演義

後世の詩文では、姉・大喬とともに「二喬」として、赤壁の物語にしばしば登場する。杜牧の詩に詠まれた二喬の一節は名高く、周瑜の武勇と結びついて語られる。 小説『三国志演義』でも、周瑜の妻としてその名が現れ、赤壁の英雄譚に華やかな彩りを与えている。
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