へんじょう

邊譲

字文礼 生没年? – 193年 所属後漢

曹操に殺され、兗州の大乱を招いた陳留の名士

能力値
統率 F
武力 F
知力 C
計略 F
政治 E
人望 D
関連年表
— 陳留郡浚儀県に生まれ、『章華賦』で名を知られる
— 孔融・陶丘洪とともに後進の俊秀と並び称される
— 大将軍何進に召されて令史となる
— 九江太守となる
初平年間 王室の乱を見て官を去り、陳留に帰る
193年頃 曹操に殺される
194年 陳宮・張邈らが呂布を迎えて兗州で背く
200年 陳琳の檄文が邊譲の死を挙げて曹操を責める

略歴

邊譲、字を文礼といい、陳留郡浚儀県の人である。若くして弁舌と博識で知られ、文章をよくした。魯国の孔融、陶丘洪とともに、後進の俊秀として並び称された。 大将軍の何進に召されて、大将軍府の令史となった。その後、才を認められて昇進を重ね、九江太守として地方に出たが、『後漢書』は、太守としては有能とみなされなかったと記している。初平年間、王室が大いに乱れると、官を去って郷里の陳留に帰った。 郷里にあっては才気をたのみ、曹操に屈することなく、侮る言葉を重ねた。曹操が兗州を治めるようになると、その言動が怒りに触れ、邊譲は殺された。193年ごろのことと考えられている。翌194年、陳宮・張邈らが呂布を迎え入れて兗州で背き、曹操は本拠のほとんどを失った。

逸話

若い邊譲の名を高めたのは『章華賦』である。楚の霊王が章華台を築いて遊楽にふけったさまを題材に、きらびやかな言葉を連ねながら、最後は正しい道に帰して結んだ。『後漢書』は、淫らで華やかな辞は多いが、終わりを正したところは司馬相如の賦の諷諫に通じると評して、その賦を伝の中に載せている。 大将軍の何進は、邊譲の才名を聞いて辟召しようとしたが、来ないのではないかと恐れ、軍事にかこつけて呼び出した。到着すると令史に任じ、礼を尽くして会った。邊譲は当意即妙の問答にすぐれ、府に満ちた賓客で、その風采を羨まない者はなかったという。蔡邕も邊譲を深く敬い、高い任に置くべき人物として何進に推薦の書を送っている。 その最期は、いくつかの記録に断片的に残る。『後漢書』は、郷里の者が曹操に邊譲を讒言し、曹操が郡に命じてその場で殺させたと記す。呉で書かれたとされる『曹瞞伝』は、かつて曹操を軽んじた者たちと並べて邊譲を挙げ、殺したうえで一族を滅ぼしたとする。同じ箇所には、曹操を軽んじていた沛の桓邵が交州へ逃れ、のちに自分から出頭して庭先で拝謝したところ、曹操が「跪けば死を免れるとでもいうのか」と言って殺した話も並ぶ。 邊譲の死を兗州の反乱とはっきり結びつけているのは、敵の側の文書である。200年、官渡を前に陳琳が袁紹のために書いた檄文は、邊譲を、英才にして天下に名を知られ、直言して阿ることがなかった人と持ち上げたうえで、「身首は梟懸の誅を被り、妻孥は灰滅の咎を受く」と書き、これより士人は憤り、民の怨みは重くなって、「一夫臂を奮えば、挙州声を同じくす」に至ったと論じた。陳寿の『三国志』は、陳宮・張邈が背いた経緯を語るのに邊譲の名を出していない。邊譲の死を、兗州の士大夫がみな恐れ、陳宮もみずから疑うに至ったきっかけとして、ひとつながりの因果に組み立てたのは、九百年近くのちの『資治通鑑』である。 若き日に邊譲と並び称された孔融も、208年、曹操によって妻子もろとも殺された。

評価

邊譲は、文才と気骨をそなえた名士でありながら、権力者・曹操を批判したために殺された。その死は、単なる一名士の悲劇にとどまらず、曹操の本拠・兗州を揺るがす大反乱を招いた。 名士の言論を力で封じたことが、かえって手痛い反撃を呼んだこの一件は、乱世における人心の機微と、士人の名声の重みを、鮮やかに物語っている。

演義

小説『三国志演義』では大きくは描かれないが、曹操に殺される陳留の名士としてその名が伝わる。 その死が陳宮・張邈の離反と、曹操の兗州の危機を招いた史実は、曹操の非情さと、それがもたらした反動を物語っている。
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