ちんりん

陳琳

孔璋 生没年? – 217年 所属

曹操の父祖まで罵った檄文の名手、建安七子の一人

能力値
統率 F
武力 F
知力 C
計略 D
政治 D
人望 D
関連年表
後漢末 徐州広陵郡に生まれ、文名を得る
189年 何進の主簿として、外兵を招く策を強く諫めるが容れられず
190年代 董卓の乱を避けて冀州へ移り、袁紹に身を寄せる
200年 官渡を前に、曹操討伐の檄文を書いて父祖にまで筆鋒を及ぼす
205年頃 袁氏滅亡後に曹操へ降り、才を惜しまれて許される
205年以降 司空軍謀祭酒として記室を管し、阮瑀とともに軍国の文書を担う
建安期 建安七子の一人として文名を高める
217年 大疫により、徐幹・応瑒・劉楨・王粲らとともに没する

略歴

陳琳、字を孔璋といい、徐州広陵郡の人である。文才、とりわけ檄文や上奏文をつづる筆に長け、孔融・王粲・徐幹・阮瑀・応瑒・劉楨とともに建安七子に数えられる、当代屈指の文人であった。 はじめ大将軍・何進の主簿となる。何進が宦官を誅するため、地方の諸将を都へ召し寄せようとしたとき、陳琳は強く諫めた——「いま将軍は皇威を握り、事を成すのは炉に髪をくべるほどたやすい。それを捨てて外の兵を招けば、強い者が雄を称え、干戈を逆さに執ることになりましょう」。何進は容れず、はたして董卓が入洛して天下は乱れた。 董卓の乱を避けて冀州へ移り、袁紹に身を寄せる。建安五年(200年)の官渡の役を前に、陳琳は袁紹のために曹操討伐の檄文を書いた(「豫州に為して州郡に移す書」)。その文は激越をきわめ、曹操その人のみならず、宦官であった祖父・曹騰と、その養子であった父・曹嵩の代にまで筆鋒を及ぼして罵倒するものであった。 袁氏が滅び、陳琳が曹操の手に落ちると、曹操は彼を責めて言った——「卿はかつて本初(袁紹)のために檄を書いた。わたし自身の罪を数えるのはよい。だがなぜ、父祖にまで及んだのか」。陳琳は謝したが、曹操はその才を惜しみ、罪を問わずに許して司空軍謀祭酒とし、記室を管させた。以後、軍国の文書の多くは陳琳と阮瑀の手から出たという。 魏に仕えて文筆をもって重んじられたが、建安二十二年(217年)、この年に猛威をふるった疫病により、徐幹・応瑒・劉楨・王粲らとともに世を去った。建安文学を担った一群が、一度に失われた年であった。

逸話

陳琳の筆の鋭さを伝える逸話は、曹操自身の口から語られている。官渡を前に袁紹のために書かれた檄文を読んだとき、曹操はちょうど頭風(激しい頭痛)の発作に苦しみ、床に伏していた。ところがその文を一読するや、はっと起き上がって「これは我が病を癒したぞ」と言ったという。敵から自らの父祖まで罵られた文章に、痛みを忘れるほど感嘆したのである。 袁氏が滅び、陳琳が捕らえられると、曹操は問うた——「卿はかつて本初のために檄を書いた。わたし自身の罪を数えるのはよい。だがなぜ、父祖にまで及んだのか」。陳琳はただ謝するほかなかった。だが曹操は罪を問わず、記室として文書を任せた。刃を向けた筆を、その鋭さゆえに手元に置いたのである。この一件は、曹操の度量を語るときに必ず引かれる。 もっとも、陳琳の見識は文章だけのものではなかった。何進が宦官誅殺のために地方の諸将を都へ招こうとしたとき、彼はこう諫めている——「いま将軍は皇威を握っておられる。事を成すのは、炉に髪をくべて焼くほどたやすい。それを捨てて外の兵を招けば、強い者が雄を称え、干戈を逆さまに執ることになりましょう」。何進は聞かず、董卓が入洛して天下は乱れた。乱世の始まりを、彼は正確に見通していた。 建安二十二年(217年)、大疫が中原を襲い、陳琳は徐幹・応瑒・劉楨・王粲らとともに世を去る。のちに曹丕は呉質への手紙で「一年のうちに、諸子は相次いで没した」と嘆き、その文を集めて世に残した。建安文学を担った一群が、一度に失われた年であった。

評価

陳琳は、乱世にあって筆一本で名を残した文人であり、その檄文の激烈さは、文章が刀剣にも劣らぬ力を持つことを示した。敵将の父祖まで罵ったその筆を、なお才ゆえに許して用いた曹操の度量とあわせ、後世に語り草となった。 建安文学を代表する七子の一人として、その名は文学史に刻まれている。

演義

小説『三国志演義』では、袁紹のために曹操を討つ檄文を書く場面で登場する。父祖まで罵るその文章は、曹操の怒りを買う。 のち曹操に降ると、その才を惜しまれて許され、用いられる。文をもって時代を動かした人物として描かれている。
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