かんげん

韓玄

生没年生没年不詳 所属後漢

黄忠・魏延の物語で知られる、長沙の太守

能力値
統率 E
武力 E
知力 E
計略 E
政治 E
人望 E
関連年表
後漢末 長沙太守として荊南四郡の一を治める
208年 曹操の荊州平定後、黄忠が裨将軍としてその統属下に入る
209年 劉備の荊南攻略に際し、四郡の太守とともに降伏する
降伏後の処遇も最期も、史書に記録が残らない
演義 関羽と一騎打ちした黄忠を内通と疑い、斬ろうとする
演義 魏延に斬られ、黄忠・魏延が劉備に降る契機となる
※斬殺は演義の創作。正史は「降った」とのみ記す

略歴

韓玄は、後漢末に長沙太守を務めた人物である。荊州南部のいわゆる荊南四郡の一を治めた。 正史『三国志』が韓玄の名を記すのは、わずか二か所にすぎない。一つは蜀書・先主伝、もう一つは同じく蜀書の黄忠伝である。 黄忠伝はこう記す。黄忠はもと荊州牧・劉表に中郎将として仕え、劉表の甥の劉磐とともに長沙郡攸県を守っていた。建安十三年(208年)に曹操が荊州を平定すると、黄忠は裨将軍を代行しつつ元の任地にとどまり、長沙太守である韓玄の統属下に入った——つまり韓玄は、この時期の黄忠の上官であった。 そして先主伝である。赤壁ののち、建安十四年(209年)に劉備が荊州南部を収めたとき、武陵太守の金旋、長沙太守の韓玄、桂陽太守の趙範、零陵太守の劉度は、いずれも降ったと記されている。 正史が伝える韓玄の事績は、これでほぼ尽きる。注意すべきは、史書が韓玄について「降った」とのみ書いていることである。斬られたとも、抗戦して死んだとも記されていない。降伏後にどう遇され、どこで生涯を終えたのかについても、記録は残らなかった。 後世の小説が韓玄に与えた劇的な最期は、この短い記述の余白に、まったく別の物語を書き込んだものである。

逸話

『三国志演義』における韓玄の最期は、あまりにもよく知られている。関羽が長沙へ攻め寄せ、老将・黄忠と一騎打ちに及ぶ。黄忠は落馬した関羽を斬らず、関羽もまた黄忠を斬らない。互いに情けをかけ合ったこの一戦を、城上から見ていた韓玄は内通と断じ、黄忠を刑場へ引き出した。そこへ魏延が躍り出て韓玄を斬り捨て、黄忠とともに劉備に降る——。 史実には、まったく存在しない場面である。正史の韓玄は、他の三郡の太守とそろって降伏したとしか書かれていない。関羽と黄忠の一騎打ちもなければ、魏延が長沙にいた形跡もない。魏延は劉備の部曲、すなわち私兵として仕え、そのまま入蜀に従った人物であって、黄忠とも長沙とも関わりがなかった。 では、なぜこの創作が必要だったのか。表向きの効能は明らかで、黄忠と魏延という二人の名将を、一つの場面で、しかも劇的に劉備陣営へ加入させられる。 だが、それ以上に重い意味がある。魏延という人物の一生の性格づけが、ここで決まるのである。降伏してきた魏延を前に、物語の諸葛亮はいきなり斬れと命じる。その理由がこうだ——「その禄を食みながら主を殺すのは不忠である。その土地に住みながら土地を献じるのは不義である」。さらに「魏延の脳の後ろには反骨がある。長く置けば必ず叛く」と付け加える。 つまり韓玄は、魏延に「主殺し」という前歴を与えるために殺された。そしてその前歴は、物語の終盤、諸葛亮の死後に謀反を疑われて馬岱に斬られる魏延の最期へと、まっすぐ伸びていく。正史の魏延にそんな経歴はなく、反骨の相の話も当然ない。一人の登場人物の宿命を用意するために、記録の乏しい太守が舞台へ引き出され、役目を果たして退場したのである。 なお、演義には「韓玄の弟」として韓浩という武将が登場し、黄忠に討たれる。だが正史の韓浩は河内の人で、曹操に仕えた護軍である。夏侯惇が人質に取られたとき、「人質を盾に脅す賊を許せば同じことが繰り返される」として構わず攻めさせ、曹操はこれを以後の法とした。屯田の建議でも知られるその韓浩と、長沙の韓玄とのあいだに血縁はない。

評価

韓玄は、史実としてはその事績のほとんどが伝わらない人物であるが、小説において黄忠・魏延という人気の武将の物語の背景に置かれたことで、かえって広く知られるようになった。 歴史上の実像は薄い霧のなかにあり、その人物像の大半は、物語の想像力によって形づくられたものである。

演義

小説『三国志演義』では、長沙の太守として登場する。関羽が攻め寄せたとき、老将・黄忠が一騎打ちで関羽に情けをかけたのを、韓玄は内通を疑って黄忠を斬ろうとする。 これを見た魏延が韓玄を斬り捨て、黄忠とともに劉備に降る。黄忠・魏延が蜀の陣営に加わる劇的な契機を作る役回りとして描かれており、これは史実には見えない物語上の脚色である。
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