だいきょう

大喬

生没年生没年不詳 所属後漢

孫策の妻となった、廬江の美姉妹の姉(二喬)

能力値
統率 F
武力 F
知力 E
計略 F
政治 F
人望 B
関連年表
後漢末 廬江郡皖県の橋公の長女に生まれる
後漢末 戦乱により、妹とともに流浪の身となる
199年 孫策が皖城を落とし、姉妹を得る
199年 孫策の妻となる(妹の小喬は周瑜へ)
199年 孫策が周瑜に「我ら二人を婿に得た」と戯れる
200年4月 孫策が許貢の食客に襲われ、二十六歳で没する
以後の消息は史書に残らない
※正史の表記は「大橋」。史料はごく僅か

略歴

大喬は、廬江郡皖県の橋公の長女である。妹の小喬とともに、美貌をもって世に聞こえた姉妹「二喬」の一人であった。 正史『三国志』における記述は、呉書・周瑜伝のわずか数行に尽きる。建安四年(199年)、孫策は荊州を取ろうとして皖城を攻め落とした。そのとき橋公の二人の娘を得た。いずれも国色——絶世の美女であったという。孫策が姉の大橋を、盟友の周瑜が妹の小橋をめとった。史書は二人を「流離」、すなわち戦乱に流浪する身であったと記している。名家の出でありながら、乱世に故郷を追われていたのである。 だが、この婚姻は長く続かなかった。翌建安五年(200年)四月、孫策は狩りの途中で許貢の食客に襲われ、その傷がもとで世を去る。二十六歳であった。大喬が孫策の妻であった期間は、わずか一年あまりにすぎない。 孫策には孫紹という子があり、のちに呉侯・上虞侯に封じられているが、その母が大喬であったかどうかを、史書は記していない。夫の死ののち、大喬がどこでどのように生きたのかについても、いっさいの記録が残されていない。 正史が彼女について語ることは、これでほぼすべてである。にもかかわらず、その名は千八百年を越えて知られている。江東の若き覇者の妻であり、「二喬」の姉であるという、ただそれだけの記述が、後世の詩人と物語作者の想像をかき立て続けたためであった。

逸話

姉妹をめとったとき、孫策は二十五歳、周瑜は二十四歳であった。江東をあらかた切り従えたばかりの、得意の絶頂である。『江表伝』は、孫策が戯れに周瑜へこう言ったと伝えている——「橋公の二人の娘は流離の身とはいえ、我ら二人を婿に得たのだから、これもまた歓ぶに足るというものだ」。 流浪の姉妹にとって、自分たちを娶ることこそが幸運なのだと言ってのける、若い覇者の傲岸さがそのまま残る一言である。正史がこの姉妹について記録した数少ない言葉が、当人たちの声ではなく、夫となる男の冗談であったところに、後漢という時代の女性の位置がうかがえる。 なお、正史の表記は「喬」ではなく「橋」である。橋公の娘であり、大橋・小橋と記される。「喬」の字が当てられて定着したのは後世のことで、両字が通用したためであった。 この「橋」の字は、後世に一つの取り違えを生んでいる。『三国志演義』には、劉備と孫尚香の縁談を取り持つ「喬国老」という人物が登場し、二喬の父として描かれる。だがこれは、若き日の曹操を見出した後漢の太尉・橋玄との混同である。橋玄は梁国睢陽の人で、廬江の橋公とは別人であった。橋玄は無名だった曹操を一目見て「天下はまさに乱れようとしている。世に命ぜられた才でなければ、これを救うことはできない。それができるのは、君ではないか」と評した人物であり、曹操は生涯その恩を忘れなかった。曹操を見出した老人と、孫策・周瑜の岳父とが、姓の一致から一人に溶け合ってしまったのである。 孫策の死後、大喬の記録は完全に途絶える。夫を失ったのは、婚礼からわずか一年あまりのことであった。

評価

大喬は、その生涯についての史料はきわめて乏しいが、江東の英雄・孫策の妻であり、絶世の美姉妹「二喬」の一人であることによって、後世に名を残した。 歴史の記録の余白は、かえって詩人や物語作者の想像をかきたて、乱世の美女の代名詞として、長く文芸のなかに描かれ続けた。

演義

後世の詩文では、妹・小喬とともに「二喬」として、しばしば美の象徴に用いられた。唐の詩人・杜牧が赤壁を詠んだ詩の「東風、周郎に便あらずんば、銅雀春深くして二喬を鎖さん(もし赤壁で東風が吹かなければ、曹操が二喬を銅雀台に囲っていたであろう)」の一節は、とりわけ名高い。 小説『三国志演義』でも、英雄の妻として二喬の名が語られ、赤壁の物語に彩りを添えている。
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