ぜぎ

是儀

字子羽 生没年生没年不詳 所属呉

財を蓄えず清貧を貫いた、呉の実直な文臣

能力値
統率 F
武力 F
知力 C
計略 E
政治 C
人望 C
関連年表
— 北海郡営陵県に生まれる。本姓は氏
— 郡相であった孔融の嘲弄を受け入れ、姓を「是」に改める
— 戦乱を避けて劉繇のもとへ移り、のち会稽へ身を寄せる
— 孫権に召されて騎都尉となる
219年 呂蒙の荊州攻略に従い、功をあげる
— 侍中・中執法として諸官の事務を統べる
230年代 呂壹の誣告事件で、同席者がみな迎合するなか一人「聞いていない」と言う
230年代 「刀鋸すでに臣の首にあり」と述べて屈せず、刁嘉を救う
— 「是非を言わぬ」と責められ、職を守る所以をもって答える
— 孫権が家を訪れ、粗末な野菜飯をみずから味わって歎息する
— 俸禄と田宅を加えられるが幾度も辞退し、恩を受けることを憂いとする
— 遺言により素木の棺と平服で葬られる(八十一歳)
— 正史は「国に事えて数十年、未だ嘗て過ち有らず」と記す

略歴

是儀、字を子羽という。青州北海郡営陵県の人である。 もとの姓は「氏」であった。郡に仕えていたとき、郡相であった孔融の嘲弄を受け、それを容れて姓を「是」に改めたと伝わる。 戦乱を避けて劉繇のもとへ移り、のち会稽へ身を寄せた。孫権に召されて騎都尉となり、建安二十四年(219年)の呂蒙による荊州攻略にも従って功をあげている。やがて侍中・中執法となり、諸官の事務を統べた。 是儀は、慎重さと誠実さによって重んじられた。口が堅く、決して人の短所を言い立てず、機密をよく守った。その一方で、必要な場面では一歩も退かなかった。寵臣の誣告によって無実の大臣が獄に下されたときには、同席の者がみな迎合するなかで、ただ一人事実を曲げず、その大臣を救っている。 とりわけ際立っていたのは、その清廉さであった。産業を営まず、人の施しを受けず、衣服は粗く、食事は味を重ねず、住まいも質素なままであった。孫権はその暮らしぶりを知って俸禄と田宅を加えようとしたが、是儀は幾度も辞退し、恩を受けることをかえって憂いとした。 臨終にあたっては、素木の棺と平服で葬るよう遺言し、務めて省約に従わせた。八十一歳で世を去っている。

逸話

是儀という人を語るとき、まず改姓の話から始めることになる。 もとの姓は「氏」であった。郡に仕えていたとき、上司にあたる郡相の孔融が、この部下をあざけってこう言った——「『氏』という字は、『民』の字の上が欠けた形ではないか。『是』に改めるがよい」。 からかいである。ところが是儀は、そのからかいを受け入れて、本当に姓を変えてしまった。以後この人は是儀として史書に残り、孔融の冗談が一人の名を永久に書き換えたことになる。 その生涯でもっとも危うかった場面は、呂壹の誣告事件であった。 孫権の晩年、呂壹という寵臣が讒言をもって官吏を次々に陥れた時期がある。あるとき呂壹は、元江夏太守の刁嘉が国政を誹謗したと誣告した。孫権は怒って刁嘉を獄に下し、その場にいた者を残らず取り調べた。 同席していた者たちは、みな呂壹を怖れた。そして口をそろえて「たしかに聞きました」と証言した。ただ一人、是儀だけが「聞いておりません」と言った。 取り調べは数日に及び、詔の文言はいよいよ厳しくなっていく。群臣は息を潜めて見ていた。そのなかで是儀が述べた言葉が残っている——「いま刀鋸は、すでに臣の首にかかっております。その臣が、どうして刁嘉のために事を隠し諱んで、みずから夷滅を招き、不忠の鬼となりましょうか。ただ、聞き知ったことには本末というものがあるのです」。 事実に拠って述べ、切迫してなお撓まなかった。孫権はついに是儀を赦し、刁嘉もまた罪を免れた。全員が迎合したなかで一人が事実を守ったことで、無実の人間が死なずに済んだのである。この一件の告発者は、孫権の晩年に讒言をもって官吏を陥れ続けた寵臣・呂壹であった。 もう一つ、孫権との問答も伝わっている。孫権が「そなたは事を挙げず、是非も言わぬ」と責めたとき、是儀はこう答えた——「聖主が上におられ、臣下は職を守っております。職に称わぬことを懼れておりますゆえ、愚かな管見の言をもって天聴を煩わすことを、敢えてしないのです」。人を陥れないという態度を、職分の話として説明したことになる。 清廉さを示す場面がもっとも印象深い。是儀は産業を営まず、人の施しを受けなかったため、高位にありながら暮らしは質素なままであった。それを聞いた孫権は、みずから是儀の家へ出向いた。そして出された粗末な野菜飯を見せてもらい、自分で味わってみたという。孫権は歎息し、すぐに俸禄を増やし、田宅を加えた。 ところが是儀は、それを幾度も辞退した。『三国志』は「恩を以て戚(憂い)と為す」と書いている。恩を受けることそのものを、この人は心苦しいことと考えたのである。 陳寿がこの人に与えた言葉は短い——「国に事えて数十年、未だ嘗て過ち有らず」。

評価

是儀は、慎重・誠実にして、とりわけ清廉をもって知られた、呉の得がたい文臣である。機密を守り、人を陥れず、財を求めず、ただ実直に職務を全うしたその姿は、権謀と蓄財のはびこる乱世にあって、ひときわ清らかな光を放っている。 派手な功名とは無縁ながら、その人格の高さによって、後世に名を残した。

演義

小説『三国志演義』では大きくは描かれないが、呉の実直な文臣としてその名が伝わる。 清貧を貫いた廉潔の士としての実像は、呉の官界を支えた実務家の一つの理想を示している。
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