しゅくゆうふじん

祝融夫人

生没年生没年不詳 所属後漢

飛刀を操る、南蛮の女傑(演義の登場人物)

能力値
統率 D
武力 C
知力 E
計略 E
政治 F
人望 D
関連年表
演義 火神・祝融の末裔を称し、孟獲の妻として南征に臨む
演義 夫に代わって出陣し、飛刀で張嶷を生け捕りにする
演義 続いて馬忠をも飛刀で捕らえる
演義 趙雲・魏延の挑発に誘われ、伏兵の絆馬索に捕らえられる
演義 諸葛亮に礼遇され、張嶷・馬忠と引き換えに帰される
演義 夫とともに諸葛亮の徳に服する
※正史には登場しない創作上の人物

略歴

祝融夫人は、小説『三国志演義』に登場する、南蛮の首領・孟獲の妻である。正史『三国志』にも、南中の地誌である『華陽国志』にも見えない、物語のなかで創作された人物である。 作中では、火の神・祝融の末裔を称する女傑として描かれる。背に五振りの飛刀を負い、投げれば百発百中。手には丈八の標槍を執り、赤毛の馬に打ち跨って戦場を駆ける。その武勇は夫の孟獲をしのぐとされた。 物語の第九十回、孟獲がすでに幾度も捕らえられては放たれ、洞中に鬱屈しているところへ、祝融夫人はみずから出陣を申し出る。蜀の張嶷が迎え撃つと、夫人は数合を交えてわざと逃げ、追ってきた張嶷を振り向きざまの飛刀で射落として生け捕りにした。続いて馬忠も同じ手で捕らえられる。蜀の名だたる将が、女性の手で立て続けに縄目についたのである。 これに対し諸葛亮は、趙雲と魏延に命じて挑発させた。二将は罵り声を浴びせては退き、決して深追いさせぬまま夫人を谷あいへ誘い込む。伏兵が絆馬索を引いて馬を倒し、祝融夫人はついに捕らえられた。 陣に引き据えられた夫人を、諸葛亮は縛めを解いて礼をもって遇し、酒を勧めたうえで、捕らえられていた張嶷・馬忠と引き換えに孟獲のもとへ帰した。 物語の終盤、夫人は夫とともに諸葛亮の徳に服し、南中の平定を彩って退場する。

逸話

「祝融」とは、中国神話における火の神の名である。南方を司り、楚の王家の祖ともされる古い神格で、五行では南に火が配される。南蛮の女傑にこの名を負わせたのは、単なる異国風の響きを狙ったものではない。南方そのものを体現する存在として造形されているのである。夫の孟獲が幾度も捕らえられては放たれ、なすところを知らぬのに対し、この妻が颯爽と馬を駆って蜀の名将を縄目につけるという配置は、物語の均衡を巧みに取っている。 『三国志演義』全編を通じて、女性が正面から戦場に立ち、名のある将を打ち破る場面はほとんどない。貂蝉は謀略の中心にいても武器は執らず、二喬は美貌によって物語に関わり、孫尚香は気性こそ烈しく侍女に武器を持たせていても、両軍の陣頭に立つことはなかった。飛刀を投げて張嶷と馬忠を生け捕りにする祝融夫人は、その意味で例外的な存在である。 捕らえられた夫人への諸葛亮の扱いも、南征の主題をよく表している。縄を解き、酒を勧めて礼をもって遇し、そのうえで捕虜の交換に応じて帰す——武で屈服させるのではなく、遇し方によって心を動かす、という一貫した方針が、ここでも繰り返されている。 史書に一行の根拠も持たないこの人物は、しかし後世に強く好まれた。京劇をはじめとする中国の伝統演劇では南蛮の女傑として繰り返し舞台にのぼり、絵画や後世の読み物にも姿を見せる。現代の三国志を題材とした作品群でも、南蛮の巻を語るうえで欠かせない顔となっている。史実の裏づけを持たない登場人物が、物語の力だけで確固たる像を結んだ例といえる。

評価

祝融夫人は、史書には記されない、あくまで小説上の人物であるが、女性の武将が正面から戦場に立つという鮮烈な造形によって、南蛮の巻に華を添えている。 その勇壮な姿は後世にも好まれ、演劇や絵画などでも南蛮の女傑として繰り返し描かれてきた。

演義

小説『三国志演義』の南征の巻において、孟獲の妻として登場する。飛刀を武器に蜀の諸将を打ち破り、女武者としての存在感を放つ。 夫・孟獲とともに、諸葛亮の徳に服して降る。史実にはない、物語ならではの彩り豊かな登場人物である。
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